日本におけるアドボカシー活動の新たなアプローチ

東京(日本)

気候変動は日本に影響を及ぼし始めています。激しさを増す台風、ますます暑くなる夏、海面の上昇は、多くの人にとって紛れもない事実です。ところが、日本に住む人の多くがこうした脅威、あるいは行動の緊急性を正確に理解していません。
 
また、温室効果ガスの排出量が世界で5番目に多い国でもある日本では、温室効果ガスの排出は地球規模で影響を及ぼす問題でもあります。日本の市民が気候変動対策に広範に取り組まなければ、政府に進路変換を迫ることはできません。その間も、煙突は空に向かって温室効果ガスを排出し続けています。
 
日本の気候変動対策に長年取り組む平田仁子は、そうした状況は変わらなければならないと考えていました。一方で、積極的に発言する市民活動の文化がなく、社会の調和が強く重んじられ、政治的意見の表明が嫌われかねない国には真の難題があるとも考えていました。さらに、あらゆる種類の気候教育が機能するためには、日本の文化と国際文化を結びつけるものでなければならず、外国グループの日本での活動の延長にすぎないと感じられるものであってはならない、とも考えていました。
 
その解決策が、クライメート・リアリティ・プロジェクトの日本支部を、日本の文化と感性に合わせ独自に調整し、立ち上げることでした。排出量だけでなく政府の政策にも影響力を持つ日本の企業部門の力を認識し、市民と企業の代表者の両方に対するトレーニングとアウトリーチに着手しました。
 
直面することになったのは、多くの人が気候危機について知りたがっているものの、行動を起こすこと、少なくとも最初の一歩を踏み出すことは難しい、という現実でした。そのため、発表したメッセージは、気候危機によって日本がリアルタイムでどのように変化しているかだけでなく、対処方法についての日本人の声とアイデアの必要性にも焦点を合わせました。このメッセージにより、解決策に関する世界の会話の中で、日本の市民が自分にも重要な役割があると考えられるようになります。
 
クライメート・リアリティ・リーダーが国内の解決策について地域社会に語りかける中、このアプローチを通じて新しい可能性が生まれることが分かってきました。企業部門におけるクライメート・リアリティ・リーダーが持続可能性およびクリーンエネルギーに関する会話のための場をつくっています。現在の政策に反対するのではなく、次の一歩を具体化します。日本のための新しいアプローチを試すことが、日本全国における気候変動対策の緩やかな成長につながると期待しています。
 
では、平田仁子、エバン・ギャッチ、三谷優衣子は、気候変動への提言を新たな場で行おうとしている人たちに何を伝えたいのでしょうか?

「文化的背景 - 人々を動機づけ、効果的に変化を起こすための方法は、文化的背景によって異なります。認識が重要 - 行動は、自国で育まれた独自の、地域とそこに住む人々を代表するもの、と感じられることが必要です。変化は基本的な理解から始まる - 問題の認知と教育は、人々を動機づけ、それに対処するための適切な行動を取るための基盤です。」

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あなたたちから見た問題は何で、それはどのような解決策に関連するものですか?

日本は主要な温室効果ガス排出国の一つです。政府の政策は、他の先進国に対して大きく後れをとっています(依然として石炭火力発電所を建設しており、具体的なロードマップがない)。気候変動に関する市民または地域社会の行動はほとんど行われていません。これは主に気候リテラシーの低さと、問題の緊急性とそれに対処するには何を変える必要があるかについての理解が不足していることによるものです。文化的背景にも原因があります。アクティビズムは一般的ではなく、政治的意見の表明は否定的に受け止められることがあります。さらに私たちは、日本の比較的保守的な社会と自らの既得権益を保護する強力な産業に対処する手段と戦略が欠如していると見ています。加えて、行動を起こすための機会がほとんどなく、そうした機会を生み出すためのリソースと知識もほとんどありません。

それを解決するための洞察と、実現したい最終結果は何だったのでしょうか?

クライメート・リアリティ・プロジェクトを日本で立ち上げ、同プロジェクトの組織、リソース、知識ベース、ネットワークを活用して日本の気候変動への意識を高め、人々が体系的な変化に向けて行動できるよう支援することです。私たちは、市民、企業、政府、その他のセクターにおける気候変動への意識を高めたいと考えました。そのために、日本におけるクライメート・リアリティ・リーダーの育成と、行動のためのツールとリソースの提供に着手しました。私たちは、気候危機に取り組むローカルな(日本固有のソリューションとグローバルなソリューションとのバランスを取りながら)アプローチを通じて地域社会に力を与え、日本と他の国々で気候変動に対して行動を起こしている人々を結び付けたいとも考えました。

この解決策があなたたちの国や地域社会にとって重要である理由は何ですか?

理由の一つは、世界の温室効果ガス排出量に対する日本の加担度合い(現在、世界で5番目)です。もう一つの理由は、気候変動への取り組みに対する(政府/企業と市民双方における)緊急性の欠如です。気候変動の原因と影響、公正なやり方でゼロ炭素社会に移行する方法、世界の他の国々と協力しながら日本固有の状況下でどうすれば移行を実現できるかを、日本とその市民が十分理解することが重要です。また、より多くの人々が参加し、解決策の一部になってもらうことも大切です。

あなたたちが直面した最大の課題は何でしたか?

日本支部の私たちにとっての問題は、組織のキャパシティでした。日本支部は発足当初で、スタッフの数は限られています。文化の違いという課題もありました。クライメート・リアリティ・プロジェクトのメッセージを日本の市民に伝えるにあたっては、日本固有の文化的背景が多くの課題をもたらしています。調和を重んじ、異なる意見を強く主張することをためらう人が多い日本では、アクティビズムの形が異なります。

多くの日本人にとっては、トレーニング後の最初の一歩を踏み出すことが大きな挑戦です(学ぶ機会に参加することに熱心な人は多いが、行動を起こさない)。私たちは多彩なクライメート・リアリティ・リーダーを擁しています。日本のリーダーの大半は企業セクターに所属していますが、政府や自治体に属すリーダーも多くいます。若者およびアクティビストは他の国の支部と比べ少数です。

このことは、期待することがセクターやグループによって非常に異なっており、メッセージ発信と組織イメージについて細心の注意を払わなければならないことを意味しています。私たちは日本における新しい環境組織であり、日本の非政府組織(NGO)界において独自の存在場所を見いださなければならず、他の組織が行った同様のプロジェクトやベンチャーとの競合を避けなければなりません。

また、業界との強いつながりを持ち、安定的で強力な保守政権も私たちにとって課題でした。人々は無力感に陥りがちです。

あなたたちは何を実行し、どうなりましたか?

私たちは、テーマに焦点を当てたアクション・グループを設立し、クライメート・リアリティ・リーダー同士を結びつけ、具体的な行動を促しました。また、気候変動に関する知識を総合的かつタイムリーに提供すると同時に、読者が気候変動の原因となる現在のシステムについて考え、その解決のために何ができるかを批判的に考えることを促すための教材も開発しています。私たちは、ウェビナーを開催し、日本のリーダーを世界のクライメート・リアリティ・ネットワークにつなぐことで、国際的な見識を日本にもたらし、日本の視点を世界に発信することに努めました。私たちの目標は、クライメート・リアリティ・プロジェクト・ジャパンを単なる外国の組織の日本支部ではなく、日本で育まれた独自の組織と受け止められるようにすることです。

主要な利害関係者とパートナーを教えてください

気候ネットワーク、クライメート・インテグレート、および他の多くの日本の環境NGOも、クライメート・リアリティ・プロジェクト・ジャパンのトレーニングと日本支部の発足を支援してくれました。

同様の方法で行動を起こそうとしている人々に、どのような洞察、アイデア、または提案を提供するのでしょうか?

文化的背景 – 人々を動機づけ、効果的に変化を起こすための方法は、文化的背景によって異なります。認識が重要 - 行動は、自国で育まれた独自の、地域とそこに住む人々を代表するもの、と感じられることが必要です。変化は基本的な理解から始まる - 問題の認知と教育は、人々を動機づけ、それに対処するための適切な行動を取るための基盤です。

あなたたちの行動はどのように公平性を促進しましたか?

日本の声を他の国々と共有すること。気候正義の問題や、世界の他の地域が気候変動によってどのような影響を受けているか、多くの人が認識していない日本に、世界の声と問題を届けること。将来的にはやりたいことだが、日本の自分たちの気候正義の問題に向き合うこと。